商業施設に出店することに対して、家賃が高いとか、ひどい目に合ったとか、都市伝説的に噂されるので、商業施設に出店するのが怖いと思われている方も多いのではないでしょうか?
私も、「〇〇モールは家賃高いでしょ?」とか、「よくそんな良い場所に出店できますね」ということを言われたり、ご相談を受けることが多くありますが、イメージや先入観と違う場合が往々にしてあります。
確かに人気の施設は出店したくてもなかなか出店できない場合もあるし、テナント企業に対しての与信が厳しいディベロッパーもいます。
ただ、そうではない施設が大半で、施設側が求めるコンセプトやターゲットに合う業態であれば、「個人事業で1店舗だけ運営してます」というようなテナントでも出店できることはあります。むしろそういう1店舗だけの人気店を誘致したいと考えている商業施設も実際にあります。
今回は、改めて商業施設に出店する際のメリットとデメリット、賃料の考え方や、実際に出店するにはどうしたらよいか?などを解説していきます。
商業施設とは、商業を目的とした施設で、ショッピングセンターをはじめ飲食施設やホール、遊技場などの複数の施設が集まった建物・地域の総称です。
商業施設の種類としては、様々な定義がありますが、ここでは下記のように分類します。
■駅ビル:駅上に専門店を集積した商業施設(主に鉄道グループの会社が運営)
例)ルミネ、アトレ、東急プラザ、京王モール、新宿ミロード、相鉄ジョイナス、ルクア、なんばシティ、阪急三番街、JR博多シティ、ソラリアステージ etc.
■駅ナカ:駅構内のスペースを利用した専門店の集積例)
グランスタ、エキュート、エチカ、エキマルシェ etc.
■地下街:主に駅隣接地下の専門店の集積例)
八重洲地下街、東京駅一番街、ウィング新橋、サカエチカ、Whityうめだ、京都駅前地下街ポルタ、NAMBAなんなん、あべちか、さんちか、岡山一番街、天神地下街 etc.
■高架下:鉄道高架下の専門店の集積
シャポー、ビーンズ、日比谷OKUROJI、2k540 AKI-OKA ARTISAN、中目黒高架下、EST エスト、なんばEKIKAN etc.
■高速SA:高速道路のサービスエリアの専門店の集積
■ファッションビル:核テナントのないファッション関連の専門店の集積
パルコ、マルイ、渋谷ヒカリエ、ラフォーレ、グランフロント、なんばパークス etc.
■ショッピングセンター/ショッピングモール:核テナントのある専門店の集積
イオンモール、ららぽーと、ゆめタウン、アリオ、モレラ、アルプラザ、フレスポ etc.
■百貨店:単一の企業が複数の分野の専門店を統一的に運営
高島屋、ISETAN、小田急百貨店、東急百貨店、阪急百貨店、大丸百貨店
ところで、駅ビルやショッピングセンターと百貨店の違いって皆さんご存じですか?
もちろん入っているお店の違いや客層・価格帯も違いますが、根本的なビジネス上の違いがあります。駅ビルやショッピングセンターは、テナントに場所を貸して利益を得る不動産賃貸業です。なので、入居するテナントとは「定期賃貸借契約」を結び、テナントは施設側に家賃を支払います。
一方で、百貨店はテナントと「消化仕入れ」「売上仕入れ」という契約を結びます。あくまで運営主体は百貨店側で、百貨店の店頭で商品が顧客に売れた時点で、はじめて百貨店側がその商品を仕入れたことと見なし、その売上高の一定割合を仕入れ代金として百貨店から出店者に支払います。
なので、あくまで百貨店が主体となるため、出店者は、初期の敷金や保証金の預け入れがないケースが多かったり、内装の負担割合も出店者が少ない場合が多いです。
ただし、最近は百貨店も形態を変え、「定期賃貸借契約」を結ぶケースが出てきています。その代表的なのが大丸心斎橋店新本館で、定期賃貸借のゾーンと消化仕入れのゾーンを融合させた百貨店ハイブリッドモデルとうたっています。
また、池袋西武本店は、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループの傘下となり、ヨドバシホールディングスとリニューアルを計画中。テナント構成や契約形態などは未公表のため、注目が集まっています。
では、ここからは路面店での出店と比較して商業施設に出店するメリットを、見ていきましょう。
①施設としての集客が見込める
商業施設は集客してこそ成り立つビジネスなので、立地や商圏を考え建築し、そのマーケットに適したMD(マーチャンダイジング)によりテナント構成を考え、一つの施設として成立させています。
駅ビルや地下街などであれば、駅が核となり通勤通学導線や生活動線上にあり、一定の通行量・集客が保証されます。
ショッピングセンターの場合はスーパーなどの核になるテナントが入っているため、定期的な安定した集客が見込めることも商業施設のメリットです。
駅であれば駅の乗降客数を調べたり、施設であれば施設の年商=集客力という指標の一つになりますので、施設年商を担当者に聞くのもおすすめです。
②集客のための販促・イベントをしてくれる
路面店であれば、販促もイベントも何もかも自社でやらなければいけませんが、商業施設に出店すると、施設としての販促でチラシやCMを打ったり、季節ごとのイベントをしたり、キャンペーンをします。テナント側は、その企画に合わせた商品やキャンペーンを考え、その販促に載せてもらいます。膨大なデータや経験から企画を打ち、予算もしっかり取るので、大きな集客に繋がります。
ただし、販促費というのもテナント側から徴収されます。
賃料に込み込みになってる場合もあれば、売上歩合の1%を家賃とは別で支払ったり、年間で固定の金額をお支払いすることもあります。施設によっては、販促費を徴収してるにも関わらずあまり販促に力を入れていない施設もあったりするので、そこは契約前に、どんな販促をやってるか確認するようにしましょう。
③環境が整っている
あるなしは、施設により千差万別ですので、事前に確認が必要ですが、
ハード面では、トラックの搬入口、ゴミ処理、バックヤード(倉庫)、従業員の更衣室や休憩室など、オープンしていくにあたり、様々な準備が必要なものが揃います。
ソフト面では、上記の販促関連などに加えて、釣り銭機や入金機がありお金の管理が楽であったり、セキュリティ面が館内全体であったり、店長研修なども用意されている施設もあります。(路面の場合は、お金の管理は、自前で毎日銀行に行くか、そういった回収業者に依頼することになります)
④認知度が上がりブランディングに繋がる
皆様も身近な商業施設を思い浮かべた時に、それぞれの施設によってイメージがあると思います。○○モールは、ファミリーが多くてカジュアルなイメージ、○○百貨店は、ラグジュアリーで洗練されたイメージなど。
商業施設に出店するということは、認知度が抜群に上がると共に、その店舗が持つイメージをより際立ててくれるため、狙いたいブランディング戦略にとても役に立ちます。逆に、ラグジュアリーなイメージにしたいのに上記の○○モールに出店したり、その逆の出店をしてしまったりすると、失敗してしまいます。ターゲットとブランドイメージの合致をさせると、よりそのブランドイメージが際立ち、さらにブランドが磨かれていきます。
他にも挙げればキリがありませんが、商業施設に出店するメリットの大きく4つを挙げさせて頂きました。
改めてお伝えしますと、上記は、施設によって異なりますので、ディベロッパーのご担当者に事前に確認することをおすすめします。また、それぞれについて、コストが掛かることが多いので、契約前にそのコストについても確認するようにしましょう。
続いて、路面店での出店と比較して商業施設に出店するデメリットです。
①工事費が割高になりやすい
出店時の工事費が高くなりやすいです。その理由としては、
・深夜工事費や警備費などがかさむ
周辺店舗の営業中にどんちゃんと工事をされると迷惑なので、工事をできる時間が限られ、深夜工事になり、業者さんの人工(1人当たりの人件費)も上がります。また夜間警備が必要だったりします。
・仮囲い設置や搬入経路に養生が必要
新築や大型リニューアルの場合は必要ありませんが、既存の施設に出店する場合は、工事に入る際には必ず「仮囲い」を設置し、粉塵などが通路や他のお店に飛ばないようにします。また、お客様が歩くスペースに資材や汚れたものを運ぶので、養生をします。養生は、営業時間までに毎日撤収しないといけませんので、その分作業の手間がかかり工期も延びます。
・B工事が高い
建物に付随する設備や、内装を触る時に、テナント側が勝手に工事をして、建物の構造や館内全体に営業を及ぼすようなことを避けるために、施設指定業者が工事をする(B工事と呼びます)範囲が決められています。
そして、これは業界としてよくあることなので包み隠さずお伝えしますと、このB工事が高いです。通常の工事の2割〜10割(2倍)増し近くになることもあります。
だいたいの相場として、その商業施設のグループ会社の業者が請けて、そこから、下請けやその下請けが実際の作業をするので、高くなるのです。私もこのB工事が高すぎるというので、何度も掛け合ったことがありますが、どうしても高くなるということは覚悟の上で出店を進めたり、なるべく費用が抑えられるように設計段階から計画する必要があります。
②制約が多く自由度が少ない
例えば営業時間。「既存店舗は深夜の2時までやってるから、深夜まで営業したい。」や「朝の時間はお客様が少なく人件費だけがかさむから、11時からのオープンにしたい」などがあったとしても、10:00〜23:00など、施設として決められた営業時間を守らなければいけません。
また、定休日を設けたり、年末年始も勝手に休んだりできません。
その他に、MD(マーチャンダイジング)の観点から、契約当初と違う商品を販売するのも許可が必要です。契約上でも業態や販売商品が書かれていることが多いため、契約時に販売する可能性がある品目があれば事前に相談しておくと良いでしょう。
③ランニングコストが高い
家賃については、最低保証+売り上げ歩合というのが一般的で、売上が上がれば上がるほど、施設側にお支払いする家賃が多くなります。また、上記のメリットでもお伝えした設備が整っている分、そのコスト負担が出てきます。
④退店への縛りが強い&退店時のコストが高い
通常の定期建物賃貸借契約には、契約期間が定められていて、その途中で解約することを中途解約と言います。契約書には中途解約の条項があり、そこには、「6ヶ月前に書面により申し入れる(事前告知する)ことで中途解約ができる」や「解約時に違約金を支払うことで中途解約ができる」と記載されています。
これが厳しいところになると、中途解約の事前告知が[8ヶ月前]とか[12ヶ月前]となっていたり、違約金が、[契約満了時までの賃料相当額]という場合もあり、簡単に退店ができないような契約になっている場合があります。
出店する時に退店のことなんて考えたくないし、そこまで細かく契約書を見ないことが多いですが、契約書に印鑑をついた時点で、元には戻れなくなります。これは路面店でも言えることですが、商業施設の方が特に厳しいことが多いので、しっかり確認しておきましょう。
また、退店時の現状回復工事についても①と同様に高くなりがちです。
以上、商業施設に出店するメリットとデメリットを4つずつお伝えしてきました。おおまかなことはお分かり頂けましたでしょうか?
大きく捉えると、「商業施設の出店は、コストが高くなるが、売上を取るための集客装置が備わっているので、高い売上を取りやすくなり、ハイリターンの可能性が高くなる」ということが考えられますね。
あくまで一般論ですが、前提としてそういう傾向があると覚えておいていただければ、契約時・出店時に施設のご担当者との話もスムーズですし、しっかり確認をすれば不安も取り除かれると思います。
その店舗の事業展開や、目指す売上規模などから、商業施設に出店すべきかどうかのご判断をされることをおすすめします。
さて、商業施設の賃料についての考え方ですが、最低保証賃料+売り上げ歩合というのが一般的です。
例えば、最低保証売上200万円/月(最低保証賃料20万円)、超過歩合10%であれば、月商300万円の月は20万円+10万円((300-100)×10%)=30万円というようにその月の売上により賃料が変動します。
売上歩合については、施設や業態によって8%〜25%という幅があります。
ショッピングセンター・モールなら8%〜20%、駅ビル・ファッションビルなら12%〜25%、空港・SAPAなら20〜25%というのが相場です。そのテナントの売上見込みなどにより、最低保証と売上歩合のバランスで交渉や相談をしていくことになります。
では具体的にどのようにして出店するの?というところですが、大枠の流れを言いますと
①出店したい商業施設の担当者にアプローチをする
②空き予定区画やリニューアル、新築の情報をヒアリングし、出店したい業態の説明をする
③お互いに検討期間とする
④出店の申し込みをする(希望条件を伝える)
⑤ディベロッパー側が候補企業(店舗)から選ぶ
⑥契約に進むこのような流れが、短ければ1ヶ月から3ヶ月程度で進んでいきます。
その物件やディベロッパーによって進め方は異なりますが、だいたいはこんな流れです。
また、①については、テナント側からアプローチが必要な場合もあれば、ディベロッパー側から魅力的なテナントを探しアプローチしていく場合もあります。
商業施設側のテナントの選定についてですが、路面と同じような感覚で、家賃さえ合えば出店できると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、家賃条件に加えて、その区画のコンセプトであったり、ターゲット層、売り上げ予測などより、テナントを選定します。
まとめ
ここまでお読み頂きありがとうございます。
商業施設出店の恐怖や不安、少しは取り除かれましたでしょうか?
Bamooveでは、初期無料相談を受け付けており、全国の商業施設への出店のご紹介も可能です。商業施設への出店希望やお困りごとなどがあれば、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。